さて、年越しを跨いだ7thアルバム”GOODBYE”の制作が終わり、溜まりに溜まっていたいろいろな雑務を処理してようやく

ホッと一息というところである。

アルバム一枚を作るのに、これまでだいたい丸3ヶ月を要してきたのだけれど、今回はそう気張らず、なるだけ流れるように

スムーズに、ひいては手早くとは言わないまでも少し駆け足でやっていこうなんて考えていた。

ところがどっこい、そうは問屋が卸してくれるはずもなく、9月から1月の一週目までどっぷり腰まで、いや肩まで浸かって

の制作となったのだった。


その間、伊藤銀次さんのライヴや、その他のサポートの演奏をこなしながらではあったけれど、後半、とくに12月から作り終えるまではろくに外にも出ず、ほとんど誰とも会わず暗い地下室に篭ったような心持ちで(僕の部屋は実際は一階にあるけれど)作業を進めていた。

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どこかで以前言った気がするけれど、作品を作り終えた直後というのは、その音を聴くことはあまりない。どうしても耳が過剰に敏感になってしまっていてそれを愉しむなんて程遠いし、「もっとこうすればよかったな、ああすればよかったな」などということはズルズルと芋蔓の様に出てきて、落ち込んでしまうことはわかっているからである。それもある程度時間が経つと自分の作品でも俯瞰で見られるようになってきて、「おお、なかなかいいじゃん」という風になっていくから(ダメな作品は時間が経っても何度聴いてもダメ)、少し寝かせてから聴くわけである。

ところが、今回はどういうわけか、完成した直後から(今日も)ずっと聴いている。正確にそれが良いことなのか悪いことなの

                                     、、

かわからないけれど、”GOODBYE”はそういう意味でまず他のこれまでの作品と違うのは確かな様だ。よくできた作品であるのか、それとも僕自身がある意味解放されて、肩の力が抜けているのかわからないけれど、毎日この最新作をひとりで愉しんでいる。SONYのヘッドフォンを頭にかけて、とても大きな音で。


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ひとつ、僕自身の感想として言えるのは、僕は大人になったのだな、ということだ。18、9歳で東京に出てきた時はろくに譜面の読み書きが出来ないだけでなく(今でもあまりうまくできないけれど)、当時の僕には小節という概念すらなかった。僕らを指導してくれたディレクターが、メモ用紙の切れ端に、横に一本の長い線を引き、それを短い5本の縦線で4つに区切ったのを覚えている。「見てごらん、これが4小節だ。わかるかい?」

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そういった基本的なことを少しずつ学んだ後は、創作に関する苦しい成長の過程が待っていた。僕はとにかく寡作で、曲などというものは一年に2、3曲できればいい方で、出来上がった時は奇跡が起きた様に感じたものだった。それをコンスタントに続けていくなどということはリンゴ・スターの言葉を借りれば、それはまさに「拷問」の様なものだった。

ディレクターは今度は僕にこう言った「君はもっとタフにならなきゃ」。


そんなわけで、20代の創作活動はとても辛いものだった。一曲の歌詞を書くのに一週間かかりっきりなんていうのはザラで、食事もろくに取らず、シャワーさえ浴びないこともあるほどだった。本当にボロボロになるまで絞り出す必要があったのだ。

そういった試練ともいうべき20代を終えて、30歳で制作した「SPRING MIST」を境に僕は大きく成長した。今ではメロディは Quicktime で保存してあるものが数百もあり、どれからレコーディングするか迷うほどだ。歌詞は作り始めたら30分〜1時間ほどで書き上げてしまうし、書きかけで次の日に持ち越したことはそれ以来一度もない。後日、ブラッシュ・アップすることはあっても、「書けない」ということがないのだ。                                               、、、、、

僕にとって、身を粉にして「質」を追求した20代に替わって「SPRING MIST」から始まった30代の課題は「数をやるこ


と」だったと、いま振り返って思う。(ミニアルバムが3枚あるにせよ)アルバム2枚だけだった20代に比べ、すでに6枚を作り上げた。そして40歳を目前にした今、それらの鍛錬が実を結び、もう一つ上の段階の「質」を手にしたのではないか、と考える。


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アルバム発売まで、あと一週間と少し、ぜひこの作品は沢山のみなさんに聴いていただきたいと思っている。僕にとって、さまざな側面、楽曲・詩・アレンジ・音質の上で一つの大きな到達点になっている作品と強く感じている。それがうれしくて、本当に作ってよかったなと実感している。加えてそれは、「えも言われぬ悲しさ」から生まれたものだということも。


その、うれしさと悲しさ、両方の感情をみなさんと共有できれば作者としてこれに勝る喜びはありません。

手にされてお聴きになった折には、みなさんからの感想、ぜひ送ってくださいね。愉しみにしています。


それから、ついでに、一応、遅ればせながら、

「明けましておめでとうございます」。

2018/01/16

「アルバム”GOODBYE”の完成」